前回の記事(家族の理解・転職サービス)では、
実際に転職活動を始めてからの流れや、
家族の理解を得るまでのリアルについてお話ししました。

今回はいよいよ、
「実際に公務員を辞めて、民間企業に転職してみてどうだったのか」
について書いていきます。

正直に言うと、
転職して良かったこともあります。

一方で、
「これは想像以上に大変だな」
と感じたこともありました。

この記事では、
・転職して良かったこと
・公務員時代との違い
・正直しんどかったこと
・それでも転職して後悔していない理由

について、できるだけリアルにお伝えします。

これから公務員から民間企業への転職を考えている方にとって、
少しでも判断材料になれば幸いです。

転職してまず感じたこと

まず最初に感じたのは、
「自分で考えて動く場面が圧倒的に増えた」
ということです。

公務員時代も、もちろん自分で考えて仕事をしていたつもりでした。

ただ、民間企業に転職してみると、
その“自分で考える”の意味がかなり違いました。

公務員の場合、良くも悪くも、

・前年踏襲
・上司確認
・庁内調整
・予算や制度の枠内で動く

という仕事の進め方が多くなります。

もちろん、それが行政組織として必要な場面もあります。

ただ一方で、
「自分で判断して、自分で動いて、結果に責任を持つ」
という感覚は、民間企業の方がかなり強いと感じました。

特に営業職の場合、
誰かが仕事を与えてくれるわけではありません。

自分で顧客を調べ、
自分で仮説を立て、
自分でアプローチして、
自分で成果につなげていく必要があります。

これは、公務員時代にはあまりなかった感覚でした。

公務員時代との一番大きな違い

一番大きな違いは、
「成果に対する意識」
だと思います。

公務員時代は、
もちろん事業を成功させたいという思いはありました。

ただ、基本的には予算があり、制度があり、組織の役割があり、
その中でミスなく確実に執行することが求められます。

一方、民間企業では、
成果が数字として見えます。

売上、契約、案件化、商談数、顧客との関係性。

こうしたものが、かなり明確に見えます。

最初はこの感覚に少し戸惑いました。

公務員時代は、
「頑張っていること」や「丁寧に進めること」自体にも一定の価値がありました。

しかし民間企業では、
最終的に成果につながっているかどうかが問われます。

これは厳しい部分でもありますが、
逆に言えば、自分の仕事の意味が見えやすいということでもあります。

転職して良かったこと

転職して良かったと感じていることは、
大きく3つあります。

① 専門性を積み上げられる感覚がある

これが一番大きいです。

公務員時代に感じていた違和感は、
やはり「専門性が積み上がりにくいこと」でした。

数年ごとに異動があり、
せっかく覚えた知識や築いた関係性がリセットされる。

この繰り返しに、どうしても納得できない部分がありました。

民間企業に転職してからは、
少なくとも自分の扱う領域について、継続的に学び続ける必要があります。

私の場合は、現在、建設DXに関わる仕事をしています。

建設業界、設計、CAD、BIM/CIM、施工管理、発注者支援、自治体営業。

覚えることは本当に多いです。

正直、最初は分からないことだらけでした。

ただ、学んだことが次の提案に活きる。
顧客との会話に活きる。
自分の言葉で説明できるようになる。

この感覚は、公務員時代にはなかなか得られなかったものです。

特に大きいと感じているのは、基本的に数年単位の人事異動がないことです。

もちろん、民間企業でも異動や配置転換がまったくないわけではありません。

ただ、公務員時代のように、数年ごとに専門分野が大きく変わる前提ではないため、一つの領域について継続的に知識を深め、顧客との関係性を積み上げていくことができます。

これは、私にとって非常に大きな安心感につながっています。

公務員時代は、毎年の人事異動の時期になると、少なからず緊張感がありました。

「次はどの部署になるのか」
「今まで積み上げてきたものは活かせるのか」

そうした不安を抱えた経験のある方も、多いのではないでしょうか。

もちろん、多様な分野を経験できることは、公務員という仕事の大きな特徴であり、強みでもあります。

私自身、入庁したばかりの頃は、その点を前向きに捉えていました。

実際、さまざまな分野を経験できたことは、自分の視野を広げる意味でも大きな財産になっています。

ただ一方で、年齢を重ねるにつれて、

「一つの分野をもっと深く追求したい」
「専門性を積み上げていきたい」

という気持ちが、徐々に強くなっていきました。

そして気づけば、異動そのものが楽しみというより、どこかストレスになっていたのです。

だからこそ今、腰を据えて一つの領域に向き合い、知識や経験、人間関係を積み上げていける環境には、大きなやりがいを感じています。

この感覚は、今の私にとって非常に大きなモチベーションになっています。

② 自分の市場価値を意識するようになった

公務員時代は、
良くも悪くも「組織の中でどう評価されるか」が中心でした。

しかし転職してからは、
「自分は外の世界で何ができるのか」
を強く意識するようになりました。

これは最初、かなり怖いことでもありました。

公務員という肩書きがなくなったとき、
自分には何が残るのか。

正直、不安はありました。

ただ実際に外に出てみると、
公務員時代の経験がまったく無駄だったわけではありませんでした。

・行政の仕組みを理解している
・自治体の意思決定プロセスが分かる
・予算や契約の感覚がある
・関係者調整の経験がある
・地域課題への理解がある

こうした経験は、民間側から見ると意外と価値があります。

もちろん、そのままでは通用しない部分もあります。

ただ、掛け合わせ方次第で十分に武器になる。

このことに気づけたのは大きかったです。

特に印象に残っている出来事があります。

入社して間もない頃、営業の先輩からこんな相談を受けました。

「行政のこの実務について、建前じゃなくて実際の運用に近い部分を知りたいんだけど、オフィシャルなヒアリングだとなかなか本音が見えないんだよね。もし可能なら、シンジロウの知り合いに少し聞いてみてもらえないか?」

私は、以前一緒に働いていた自治体職員の知人に連絡を取り、状況を確認しました。

すると、行政側が実際にどう考えているのか、現場ではどんな温度感なのかといった情報をある程度把握することができました。

その内容を先輩へ共有したところ、非常に喜ばれたのを覚えています。

「これができるのは社内でもお前くらいだよ。助かった。」

そう言われたとき、初めて「公務員経験そのものが価値になる場面もあるんだ」と実感しました。

民間企業からすると、行政の意思決定や実務の流れは、外からは見えにくい部分が多いようです。

だからこそ、行政経験がある人間だからこそ分かる感覚や視点が、思った以上に役立つ場面があります。

もちろん、公務員経験だけで評価されるわけではありません。

ただ、その経験をどう活かすか次第で、十分に強みに変えられる。

これは、実際に外に出てみて初めて分かったことでした。

③ 働き方を自分で選んだ感覚がある

これも大きいです。

公務員を続けることが悪いわけではありません。

むしろ、公務員という仕事には大きな意義があります。
安定性もありますし、地域社会を支える重要な仕事です。

なくてはならない存在ですし、私自身、退職を考えたときには、その意義について何度も悩みました。

ただ私の場合は、
「自分の意志で今の働き方を選んでいる」
という感覚が欲しかったのだと思います。

転職したことで、
誰かに決められたキャリアではなく、
自分で選んだキャリアを歩いている感覚があります。

これは精神的にかなり大きいです。

たとえ大変なことがあっても、
「自分で選んだ道だから頑張ろう」
と思えるようになりました。

具体的なエピソードがあります。

公務員には、年に一度、人事異動に向けた所属長面談があります。

今でも忘れられない出来事です。
当時、私はある広域観光推進関連の団体に派遣されていました。

当初は、県の代表として2年間派遣されるという約束でした。
その任期が終わりに近づいたころ、派遣元である県の観光課長と人事異動に関する面談を行いました。

その少し前、派遣先のトップからは、次のように言われていました。

「君は貴重な戦力だ。特に今は、コロナ禍が明けて観光推進にとって大事な時期だ。県の部長には、私から1年間派遣期間を延長してもらえないか打診している。もし君さえよければ、延長も視野に入れてほしい」

自分の力を必要としてもらえていることが、何より嬉しかったです。

私自身も、派遣先での仕事や仲間が好きでした。
だからこそ、派遣延長に向けて、自分なりにメリットを整理しました。

県にとっても、派遣先にとっても、そして自分自身にとっても、延長には意味がある。
三者にとってWin-Winになるはずだ。

そう考え、そのロジックを観光課長との面談で説明し、派遣延長を訴えました。

しかし、課長の回答は非常に冷たいものでした。

「2年間はルール。三者にとって延長のメリットがあるとかは関係ない。人事課はそんなことを考えていないし、求めてもいない。諦めてほしい」

その言葉を聞いたとき、怒りよりも先に、呆れて何も言えなくなりました。

県の人事に、心底失望した瞬間でした。

そして、私の不信感をさらに強めたのは、観光課長自身が人事課に掛け合おうとする姿勢すら見せなかったことです。

もちろん、最終的な判断権限が人事課にあることは理解しています。

ただ、現場で実際に仕事を見てきた所属長として、
「現場としては延長させたい」
「今は継続性が重要な時期だ」
といった意見を、せめて人事課に伝えようとする動きすらありませんでした。

その場で、まるで最初から結論が決まっていたかのように、一蹴されてしまったのです。

延長することで、広域観光をさらに前に進めたい。
自分自身の観光分野の知見も、もっと深めていきたい。

そう思っていた気持ちは、見事に砕かれました。

では、自分は何のために派遣され、現場で学び、人脈を築いてきたのか。

その意義すら、分からなくなってしまったのです。

正直しんどかったこと

もちろん、良いことばかりではありません。

正直、しんどかったこともあります。

① 最初は本当に分からないことだらけ

転職直後は、かなり大変でした。

業界用語、製品知識、営業の進め方、顧客との会話。

公務員時代には当たり前に分かっていたことが、
民間企業では通用しない場面も多くありました。

特に、専門用語が飛び交う会議では、
最初は話についていくのが精一杯でした。

「自分は本当にやっていけるのか」

そう感じたこともあります。

ただ、これはある意味当然です。

17年間いた世界から、まったく違う世界に飛び込んだわけです。

最初から完璧にできるはずがありません。

大事なのは、
分からないことをそのままにしないこと。

一つずつ調べ、聞き、メモし、実務の中で覚えていく。

地味ですが、結局これしかありませんでした。

ただ一つ、今の時代ならではの非常にありがたい存在があります。

「AI」です。

例えば、営業時の会話で分からなかった内容を録音し、AIに解説してもらう。
今のAIは非常に優秀で、音声データを読み込み、専門用語や会話の内容を分かりやすく整理・言語化してくれます。

これは本当に助かりました。

また、専門雑誌の記事についても、スマホで写真を撮ってAIにアップロードし、解説を依頼すると、難しい内容でも驚くほど丁寧に分かりやすく説明してくれます。

昔であれば、専門書を読み、ネットで調べ、先輩に聞き、時間をかけながら理解していくしかありませんでした。

もちろん、今でも自分で考えて学ぶことは大切です。

ただ、AIの登場によって、知識のキャッチアップ速度は間違いなく劇的に上がりました。

これは、未経験分野へ挑戦する30代にとって、非常に大きな武器になると思います。

さらに言えば、私は公務員時代から、異動のたびに新しい分野をキャッチアップする仕事を続けてきました。

福祉、企画、観光、建設――。

毎回ゼロから学び直す必要がありましたが、その経験が結果的に「新しいことを吸収する力」につながっていたのだと思います。

だからこそ今は、
年齢そのものよりも、

「学び続ける気持ちがあるか」

の方が、ずっと重要だと感じています。

気持ちさえあれば、人は30代からでも十分成長できます。

② 公務員時代の“当たり前”が通用しない

公務員時代の感覚が、
そのまま民間で通用しない場面もありました。

例えば、スピード感です。

公務員の場合、
関係部署への確認、上司への説明、文書の整理、決裁など、
物事を進めるまでに多くの手順があります。

一方、民間企業では、
判断と行動のスピードがかなり求められます。

もちろん雑でいいという意味ではありません。

ただ、
「完璧に整ってから動く」
というより、
「動きながら修正する」
という感覚が強いです。

この違いには、最初かなり戸惑いました。

③ 安定を手放した不安はゼロではない

公務員を辞めた以上、
安定を手放した不安がまったくないと言えば嘘になります。

特に私の場合、
家族がいて、住宅ローンもあります。

なので、
「本当にこの選択で良かったのか」
と考える瞬間がなかったわけではありません。

ただ、それでも私は、
何も変えずに違和感を抱え続ける方が怖かった。

40代、50代になってから、
「あのとき挑戦しておけばよかった」
と思う方が、自分にとっては大きな後悔になる気がしました。

公務員経験は民間で活きるのか

これは、かなり気になる方が多いと思います。

結論から言うと、
公務員経験は活きます。

ただし、
「そのままでは活きにくい」
というのが正直なところです。

例えば、
「私は行政で〇〇業務を担当していました」
だけでは、民間企業には伝わりにくいです。

大事なのは、
その経験を民間企業の言葉に置き換えることです。

例えば、

・関係機関との調整経験
→ ステークホルダー調整力

・予算要求、契約、補助金業務
→ 事業推進、制度理解、行政手続きへの理解

・観光、建設、福祉、環境などの担当経験
→ 特定業界や地域課題への理解

・議会対応、幹部説明、資料作成
→ ロジカルな説明力、リスク管理力

このように言い換えることで、
公務員経験は十分に武器になります。

ただし、
自分で言語化しなければ伝わりません。

ここは転職活動でも、転職後でも非常に重要だと感じています。

転職して後悔しているか

結論から言うと、
私は後悔していません。

もちろん、楽な道ではありません。

公務員を続けていれば、
もっと安定した日々だったかもしれません。

ただ、今の私は、
自分の仕事を自分の言葉で語れるようになりたいと思っています。

専門性を持ち、
顧客に価値を提供し、
自分自身も成長していく。

そういう働き方をしたかったのだと思います。

転職してから、
分からないことも増えました。

不安もあります。

でも同時に、
「まだまだ成長できる」
という感覚もあります。

この感覚を得られただけでも、
私にとっては大きな意味がありました。

これから転職を考える30代公務員の方へ

もし今、
「このまま公務員でいいのか」
と悩んでいるなら、
その違和感を無視しない方がいいと思います。

ただし、勢いだけで辞めるのはおすすめしません。

まずは情報収集をする。
自分の市場価値を知る。
家族がいるなら、家族と話す。
転職した場合の収入や働き方を具体的に確認する。

そのうえで、
転職するのか、
公務員を続けるのか、
自分で選べばいいと思います。

大切なのは、
「なんとなく不満だから辞める」
ではなく、
「自分はどう働きたいのか」
を考えることです。

私自身、転職したからといって、
すべてが劇的に変わったわけではありません。

ただ、
自分のキャリアを自分で選んだという実感はあります。

これは、30代で転職を考えるうえで、
とても大きな意味を持つと思っています。

まとめ

公務員から民間企業に転職して感じたことをまとめると、
以下のとおりです。

・民間企業は成果への意識が強い
・自分で考えて動く場面が増える
・公務員経験は言語化すれば武器になる
・専門性を積み上げられる感覚がある
・一方で、最初はかなり大変
・安定を手放す不安もある
・それでも、自分で選んだキャリアには納得感がある

転職が正解とは限りません。

公務員を続けることも、
十分に価値ある選択です。

ただ、
「自分のキャリアを一度立ち止まって考えること」
には大きな意味があります。

このシリーズが、
30代で公務員としての働き方に悩んでいる方にとって、
少しでも参考になれば幸いです。

私が実際に使って良かった転職サービスについては、
こちらの記事でまとめています。

▶ 30代公務員におすすめの転職サービス【実体験あり・失敗しない選び方】

公務員を辞めるか、続けるか。

どちらが正解かは、人によって違います。

ただ一つ言えるのは、
「選択肢を知ったうえで選ぶこと」
が、後悔しないキャリアにつながるということです。

※この記事は全3回のシリーズです。
▶ part1:公務員を辞めたいと思ったきっかけ
▶ part2:家族の理解・転職サービス